食物アレルギーとは
食物を摂取等した際、食物に含まれる原因物質(アレルゲン:主としてたんぱく質)を異物として認識し、自分の身体を防御するために過敏な反応を起こすことがあります。これを食物アレルギーといいます。
食物アレルギーを持つ消費者の健康危害の発生を防止する観点から、過去の健康危害等の程度、頻度を考慮し、特定原材料を定め、容器包装された加工食品について、当該特定原材料を含む旨の表示を義務づけています。
食物アレルギーの調査結果から見えるもの
消費者庁の調査(2022年)によると、木の実類が原因のアレルギーが急増しています。前回調査(2017 年)では原因食物の上位3品目は鶏卵、牛乳、小麦でしたが、今回の調査では木の実類の割合が13.5%に増加し(前回 8.2%、4位)、小麦を抜いて主要3大原因食物の一つとなりました(図1)。
実際にコンビニやスーパーでは、素焼きのアーモンドやミックスナッツが、ロカボなど健康に良いということで陳列され、流通量も増えています。
種類 | n | 全体に対する% |
---|---|---|
クルミ | 463 | 7.6% |
カシューナッツ | 174 | 2.9% |
マカデミアナッツ | 45 | 0.7% |
アーモンド | 34 | 0.6% |
ピスタチオ | 22 | 0.4% |
ペカンナッツ | 19 | 0.3% |
ヘーゼルナッツ | 17 | 0.3% |
ココナッツ | 8 | 0.1% |
カカオ | 1 | 0.0% |
クリ | 1 | 0.0% |
松の実 | 1 | 0.0% |
ミックス・分類不明 | 34 | 0.6% |
合計 | 819 |
「木の実類」を個別に解析してみても、木の実類の中で1位のクルミは 463 例(全体の 7.6%)で(表1)、鶏卵、牛乳、小麦に次いで第4位となりました。木の実類の増加傾向について 2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵、牛乳、小麦がほぼ横ばいであるのに対して 2014 年以降、木の実類は増加しています(図2)。木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加しています(図3)。国内消費量が増えると、アレルギーも増えていきます。
アレルギー表示の主な変更点
アレルギー表示の主な変更点として、1は2019年9月よりスタートし、2~6は2020 年 4 月完全施行となった点を、既に対応されている食品事業者様は多いとは存じますが改めて下記に列挙します。
1.特定原材料に準ずるものは21品目
原材料に含まれる特定原材料7品目のアレルゲンの表示を義務付けはこれまで通り、2019年9月より、特定原材料に準ずるものはアーモンドが追加され、21品目になりました。
また、落花生はピーナッツと表示できるようになりました。
2.特定加工食品が廃止
例えばマヨネーズならマヨネーズ(卵を含む)、うどんであればうどん(小麦を含む)と、必ず含まれるアレルゲンを表示する必要があります。
3.原則は個別表示とし、例外的に一括表示
一括表示する場合は、全てのアレルゲンを漏らさず表示します。
4.個別表示では、原材料と添加物では表示方法が異なる
添加物の場合は、〇〇由来、「(○○由来)」と表示し、2つ以上の特定原材料等から構成される添加物については、「用途名(物質名:○○・○○由来)」と表示します。
5.複数のアレルゲンが含まれる場合は中黒を使う
複数のアレルゲンが含まれる場合は「・」でつなぐ表記へ変更にします。例えば、醬油なら醤油(小麦・大豆を含む)と表示する必要があります。
6.一括表示をする場合は、省略せずまとめて表記
一括表示の場合の表記方法は、一括表示をする場合は、特定原材料等そのものが原材料として表示されている場合や、代替表記等で表示されているものも含め、当該食品に含まれる全ての特定原材料等について、原材料欄の最後(原材料と添加物を事項欄を設けて区分している場合は、それぞれ原材料欄の最後と添加物欄の最後)に省略せずまとめて表記します。例えば、一部に小麦・大豆・乳成分を含む、などです。
木の実類の特定原材料に準ずるものへ追加
カシューナッツは2013年9月、特定原材料に準ずるものへ追加 《義務7品目・ 推奨20品目》、アーモンドは2019年9月、特定原材料に準ずるものへ追加され、《義務7品目・推奨21品目》になりました。クルミは義務表示対象品目への追加に向けた検討が始まりました。
前述でクルミのアレルギーが増えている調査結果をご紹介しましたが、クルミが特定原材料や特定原材料に準ずるものに追加されると、さらに厳格に管理する必要があるでしょう。特定原材料に準ずるものでも追加されると、猶予期間が設けられていましたが、アーモンドでは可能な限り速やかに表示を行うことが望ましいとされました。クルミに関しても、ショック症例集症例数(アナフィラキシー)が増えており、クルミが追加されれば速やかな対応が求められる可能性が高く、今後もより注意が必要です。法律が変わる可能性をもった意識で見ていただければと思います(表2)。
原因食物 | 区分 | 2012年度 | 2015年度 | 2018年度 | 2021年度 | 対応 |
---|---|---|---|---|---|---|
クルミ | 即時型症例数 | 40 | 74 | 251 | 463 | 義務化を視野に入れた検討 |
ショック症例数 | 4 | 7 | 42 | 58 | ||
アーモンド | 即時型症例数 | 14 | 21 | 34 | 推奨品目への追加(2019年9月) | |
ショック症例数 | 4 | 1 | 7 |
前回の調査(2018年)からクルミを筆頭に木の実類の症例数の増加が顕著であり、今回調査においても同様の傾向があったことから、即時型食物アレルギーの原因食物としての木の実類の増加は一時的な現象ではないでしょう。
食品製造及び販売会社における徹底した管理が、食物アレルギー患者が安心して生活できる社会へと繋がります。消費者の健康を守るため、またアナフィラキシー対応の一貫として食物アレルギー表示制度への速やかな対応が必要でしょう。
本記事で紹介する「食品大目付 そうけんくん」は、食品表示法や表示基準のほか食品表示関連法規や添加物の一元管理、アレルゲン入力漏れチェック機能、添加物のチェック機能が網羅されている食品表示管理システムです。迅速な法対応を可能にします。
【参考】
・消費者庁「第1回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議(2021年2月15日)【資料2】くるみの義務表示化の経緯等について」
・消費者庁「食品表示法等(法令及び一元化情報) ・別添 アレルゲン関係」
・消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報 食物アレルギー表示について ・アレルギー表示とは」
・消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報 食物アレルギー表示について ・Q&A別添 アレルゲンを含む食品に関する表示」
・消費者庁「アレルゲンを含む食品に関する表示について(令和元年9月19日消食表第322号)」
・消費者庁「令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書」