
はじめに
ここまで順調に逐条解説を進めてきた、Codex「食品衛生の一般原則(CXC-1)」(General Principle of Food Hygiene;GPFH)最新2022年版逐条解説、今回からHACCP12手順の11手順目、HACCP7原則「適用」の第6原則目である「Codex 19.11:妥当性確認およびシステム検証」の逐条解説に入ります。これまでの条項と大きく違っているのは、この「Codex 19.11」は小項目がさらに3つあることです。したがいまして、まずは条項の全体像を、ふかん(俯瞰)整理してみましょう。
手順11と手順12が“同じ条項に記述”の意味
「Codex 19.11 妥当性確認および検証手順(手順11/原則6)」の小項目を図1に列挙してみました。皆さま、これまでの状況と比較して違和感を持ちませんか。「19.11.1 HACCP計画の妥当性確認」「19.11.2 検証手順」「19.11.3 文書化と記録保持を確立する(手順12 /原則7)」と続きます。そう、条項の中項目のタイトルが「手順11/原則6」だったはずなのに、その中身は小項目で「手順12 /原則7」を取扱っているのです。細かいところで整合性を気にしてしまう日本人としては、なんとも居心地の悪い、「これはミスなんじゃあないですか?」と質問してしまいたくなる構成となっているのです。

実際これはほかの条項にはない特徴で、同じ条項に2つの手順を入れ込んでいるのはここだけとなります。ここまで条項番号自身が12手順の番号と符合していてもいたので、余計に違和感を増します。そうしたわけで、2020年版策定当時の委員を務めた、とある専門家と過去に「食×農MOOC」でウェブ対談した(その後、月刊HACCPにも一部掲載)折にも、直截に確認したのですが、あまりはっきりした回答は得られませんでした。
こうして策定者の見解を明確に得ることもなく、今に至っているわけですが結論から申し上げますと、検証と記録は詳細に見ていくとシステマティックな順序はとても厳然としていて詳細項目レベルで確立手順の前後関係がたびたび入れ替わる、要するに行って戻ってワンセットで確立するのがこの「検証と記録」である、という答えに行きつきます。以降の逐条解説でもこの前後関係(すなわち、“いつ”やるか)を徹底して現場でわかりやすいように解説を進めていくつもりでおります。
妥当性確認が先で、遵守検証は後にくる
第32回にあった通り、HACCPの適用は12ステップで確立され、“科学に基づき系統的”であるがゆえに、12手順通りに確立を進めないと「非-系統的」(システマティックではない)、すなわち「一貫した紐づいた状態ではない」計画となる、おそれが出てきます。ですから手順は遵守するのが原則であるものの、「検証と記録」はセットなのでたびたび行って戻っていたしますよ、という前提でここからの話を読み進めてください。
もう一つ大切な、外してはならない要素が、“原則6 検証”というのは「妥当性確認」と「遵守検証」という2大要素で構成されている、というポイントです。ここでも大切になるのは“科学に基づき系統的”な順序で、図にある通り必ず「妥当性確認」が先に来て、その後に「遵守検証」が続きます。ここに「記録」も入り混じるので“原則6 検証”がもっとも理解しにくいといわれる方もいますが、これは系統的な手順をしっかりと理解することで解決できます。
日本の食品衛生法に基づく「HACCPに沿った衛生管理」も法制化から6年(完全施行から4年)が経ち、いよいよこの“原則6 検証”に向き合うべき時期に来ています。これまでは「形式的」な実施に済んでいた法令順守が、Codexで示されているような「手順に基づき系統的である」ことが求められる時代に突入することを本回以降の解説で一つずつ、ご理解いただけると皆さまの事業継続や発展に大きく資するものと期待します。
原則6と原則7はすべての前原則と科学的に紐づく
ここで「HACCP原則編」を見直しします。リンク先の詳細を必ずご一読ください。Codex「食品衛生の一般原則(CXC-1)」(General Principle of Food Hygiene;GPFH)最新2022年版逐条解説では、「セクション1:HACCPシステムの原則」編の最終回を2023年5月20日公開の第40回で解説していて、ここでは正に本回と同様に、「妥当性確認、遵守検証、記録付け」の“原則面”をセットで取扱っています。次回はこれらをどう“適用”していくかの各論にいよいよ入っていくわけですが、やはり原則を正確に理解しておくことは、キーとなるレベルでとても大切です。
「妥当性確認」と「遵守検証」の確立の前後関係の順序と、同じ“原則6”のママとした経緯もこの回で解説済みです。特筆するべきは「検証」の定義でまず抑えていただきたいポイントとして「モニタリングに加えて」(in addition to monitoring)という表現を強調していることです。これはHACCP概念においてハザードをコントロールする手段として、“原則4 モニタリングシステムの確立”だけでは独り立ちできず、“原則6 検証”が系統的に紐づいていてはじめて“コントロール手段”足り得ると「断言」しているということです。
ここまでの、原則1「ハザード分析とコントロール手段」(第36回)から原則2「必須管理点」(CCP)(第37回)、原則3「許容限界」(CL)、原則4「モニターシステム」(ここまでが第38回)、原則5「是正措置」(CA)(これが第39回)までのすべてに、原則6「検証と妥当性確認」が紐づけられます。加えて、この原則1~6まですべてが原則7「文書化と記録づけ」に紐づけられます。今回はここまでしっかり押さえていただいて、この先の詳細な解説を読み進むための準備といたしましょう。

月刊HACCP(株式会社鶏卵肉情報センター)
代表取締役社長
杉浦 嘉彦 氏
株式会社 鶏卵肉情報センター 代表取締役社長(2005年より)
一般社団法人 日本HACCPトレーニングセンター 専務理事(2007~2024年)
国際HACCP同盟認定 トレーナー・オブ・トレーナー
月刊HACCP発行人、特定非営利活動法人 日本食品安全検証機構 常務理事(農場HACCP認証基準 原案策定 作業部会員)、農林水産省フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)ファシリテータ、東京都および栃木県 食品衛生自主衛生管理認証制度 専門委員会 委員、フードサニテーションパートナー会(FSP会) 理事、日本惣菜協会HACCP認証制度(JmHACCP) 審査委員、日本フードサービス協会 外食産業 JFS-G規格及び手引書 策定検討委員、その他多数
作れる!!法制化で求められる衛生管理計画への道筋
監修 一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター
編集 株式会社鶏卵肉情報センター 月刊HACCP編集部
一般社団法人日本HACCPトレーニングセンター(JHTC)による事業者支援セミナーをテキスト化した一冊です。
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